侃侃房の本のことなど

医療現場の「前線」から(田島安江)

歌人の犬養楓さんから、問い合わせをいただいたのは昨年の12月7日、まさに新型コロナウイルス禍の第3波が猛威をふるい始めた頃だった。救急専門医として「今まさに第3波で悲鳴を上げる医療機関の内なる声や現実を集めた最新の短歌連作を紙の歌集として出版…

笹井宏之さんの命日に(田島安江)

今日は1月24日。笹井宏之さんの命日だ。 歌集2冊『ひとさらい』と『てんとろり』を出版してからもう、8年が経つ。歌集制作のために通った時間を忘れることができない。あの年、激しく雪が舞った。カバーデザインを持って、伺った帰り。 有田から福岡に戻る途…

『ゆりちかへ ママからの伝言』から10年が過ぎ(田島安江)

書肆侃侃房が今のように、書店に知られるようになったきっかけは、2007年10月9日発刊のテレニン晃子著『ゆりちかへ ママからの伝言』である。出版をはじめて、5年ほどが経っていた。そのころは、ほんとうに作った本が売れなかった。書店(たとえば東京や大阪…

谷川俊太郎さんから劉霞さんへ、返歌が(田島安江)

谷川俊太郎さんに 劉暁波詩集『独り大海原に向かって』と 劉霞詩集『毒薬』をお送りした。 『毒薬』に「無題―谷川俊太郎にならって―」 という作品があったからだ。 そうしたら、思いがけなく、谷川さんから 「劉霞に」という素晴らしい詩が届いた。 この詩集…

ひとひらの雪(田島安江)

はじまりのことばがゆびのあいだからひとひらの雪のように落ちた 笹井宏之歌集『てんとろり』より 寒い日が続いている。1月24日は、笹井宏之さんの命日だった。このちらつく雪を眺めながら、宏之さんのお母様、筒井和子さんとしみじみと話をした。裏山も真っ…

東京・赤坂の「双子のライオン堂」にて、設立15周年記念「書肆侃侃房全点フェア」がはじまります!

東京・赤坂の「双子のライオン堂」にて、設立15周年記念「書肆侃侃房全点フェア」がはじまります!9月6日(水)からの開催です。関連して、会期中にイベントも行われます。あわせてお楽しみください。 ■イベント ①歌集『眠れる海』(書肆侃侃房)刊行記念 野…

本の専門卸である株式会社子どもの文化普及協会と契約しました!

本の専門卸である株式会社子どもの文化普及協会と契約しました! 雑貨店やカフェ、美術館、ギャラリー、インテリアショップなど、本の販売を主目的とはされないお店でも、書肆侃侃房の書籍を扱っていただけるようになりました。 『あひる』(今村夏子)、『…

読売新聞6月18日号で、短歌の新しいレーベル「ユニヴェール」が紹介されました!

読売新聞6月18日号で、短歌の新しいレーベル「ユニヴェール」が紹介されました! 《若い歌人の歌集を手がけて話題となってきた福岡市の出版社書肆侃侃房が、中堅歌人の歌集を扱う新たなレーベル「ユニヴェール」を創刊した。〔……〕レーベル名には「短歌の壮…

『ちぇっくCHECK』vol.1で、金原瑞人さんに『アンニョン・エレナ』をご紹介いただきました!

『ちぇっくCHECK』vol.1に、金原瑞人さんによる『アンニョン・エレナ』(キム・インスク/和田景子訳)の書評が掲載されました! 「本当に驚いた。なにより文体が素晴らしい。べたっとした現実感があるかと思えば、ときにユーモラスで、あちこちに思いがけな…

新潟日報(2017年5月28日号)で、金原瑞人さんに鈴木美紀子著『風のアンダースタディ』をご紹介いただきました!

新潟日報(2017年5月28日号)で、金原瑞人さんに鈴木美紀子著『風のアンダースタディ』をご紹介いただきました! 「世界との違和感、もてあます自分、物語になりそうでならない夢、それらを鮮やかに捉えた鈴木美紀子『風のアンダースタディ』(……)つい心を…

Instagramはじめました

このたび、書肆侃侃房のInstagramページを開設しました! 当面は書肆侃侃房から刊行されている歌集から、編集部員が一日一首紹介する【今日の短歌】を更新していきます。 お気に入りの歌がみつかるとうれしいです! ぜひぜひ、フォローお願いします↓ Instagr…

不思議なめぐりあわせ

新しい短歌レーベルがスタートした。「ユニヴェール」は宇宙の意味。短歌の壮大な宇宙にちりばめられた歌集たち。その第一号は白井健康さんの『オワーズから始まった。』である。白井さんに初めてお会いした時、彼が獣医師であり、宮崎で口蹄疫が猛威を振る…

変わらぬ光

寒いと言いながら仕事をこなしているうちに、1月、2月と過ぎていき、3月になってしまった。何人かの著者との悲しい別れが思い出させられる。 2009年1月24日深夜に亡くなった笹井宏之さん。笹井さんの消えない悲しみを一体どうしたらいいのだろう。最近やっと…

音の記憶からオタク道まで

フリーペーパー最新号「ほんのひとさじvol.4」が12月に発行されました。今回の特集は「音の記憶」。 学生時代はオーケストラ愛好会に入っていてビオラを弾いていた私にとってのそれは、オーケストラのチューニングの音。プロのオーケストラの演奏会で聞く音…

生きることの苦さ

このところの寒さと雨で、窓から見える銀杏並木がいっせいに葉を落とし始めた。社内でも、出来上がってくる本と、年末までにやっておきたいことなどがわっと動いていて、いつも以上に落ち着かない。「たべるのがおそい」vol.1とvol.2や今村夏子著『あひる』…

今村夏子さんの『あひる』がやってきた

出版社をはじめてから、思いがけないことがたくさん起こる。文学ムック「たべるのがおそい」を創刊できたこともだが、そこから今村夏子さんの『あひる』が生まれたこともだ。思いがけず芥川賞にノミネートされたとき、こんなことが起こることもあるのかと驚…

今村夏子さんの新作を、書店に並ぶ前に読むシアワセ

わが社の文学ムック「たべるのがおそい」vol.1に掲載され、第155回芥川賞候補となった今村夏子さんの小説「あひる」。受賞は逃しましたが、選考委員の評価も高く、わが社にも「単行本の発刊はまだですか?」という声も多く寄せられました。 デビュー作「こち…

旅から生まれた本

書肆侃侃房の原点はと聞かれて、ふっと詰まった。うーん、名前の由来は自分の詩集を作るときに友人から出た言葉がきっかけで決まった「侃々諤々」だけど・・・・。やはり旅の本かなあと思う。福岡にはたくさんの出版社があって、後発組の書肆侃侃房だったか…

道下さん、リオパラリンピックおめでとう!

リオパラリンピックの女子マラソンでみごと銀メダルに輝いた道下美里さん。 リオから帰国したときは、福岡空港に押しかけてみんなでお出迎え。彼女は「おかえりなさい。おめでとう」と歓声を上げるラン仲間に「リオにいるときに不安で気持ちが負けそうになっ…

韓国女性文学シリーズはじまりました

書肆侃侃房の海外翻訳のWoman’s Bestのシリーズで、「韓国女性文学シリーズ」の刊行がスタートしました。一作目の『アンニョン、エレナ』金仁淑(キム・インスク)が先週できあがってきました。金仁淑さんは、韓国で最も権威ある文学賞、李箱文学賞など多く…

電子書籍と本棚問題

前回のブログで電子書籍初体験の話がでてましたが、私は電子書籍にはかなりお世話になっています。それは...小説、ガイド本、雑誌などではなく...漫画...。 本はよく読むし、収集癖のうえ捨てられない性格が重なって本は増える一方。溢れた本を見るたび夫は…

釜山に行ってきました!

主に制作の仕事をしています。著者の原稿を本の形に作っていく毎日ですが、著者としても参加している本があります。たまたまテレビで観た韓国のエンタメニュースで一人のアイドルにハートをわしづかみにされてから8年あまり…追っかけの日々。ついに好きが高…

小説を読むたのしみ

今村夏子さんの芥川賞候補騒ぎで、1カ月もの間、さまざまなことを楽しませてもらった。今回残念だったけれど、今村さんの創作の秘密を知ることもできたし、何よりありがたかったのは、今村さんが言われた言葉「久々に最後まで小説を書き上げることができた…

モーニングで読書。

ただいま、小学3年生と0歳児を子育て中。会社を定時で退社したら、寝かしつけまで座る暇なく、やっと一呼吸ついて、テレビやらSNSなどを見ているともう寝る時間。なかなか落ち着いて本を読む時間が取れないので、本を読むのは、モーニングやランチでのすき間…

走れないから読む。

転んだり、ぶつけたりで怪我が超多いおっちょこちょいの私です。あ〜、また肋骨の骨折やっちゃいました。 走れないストレスには「本」。面白い本読んで気を紛らわそうっと。夢野久作って、オドロオドロシイ世界が理解し難い気がして近づかなかったけど、これ…

福岡マラソン、またハズレ

私は、基本的には毎日走っている人です(雨とか降るとさぼりますし、飲み会などに誘われるとそっちへ行きますが)。そして、走ることで人生が変わったと日々実感しています。 どう変わったかというと、ラン仲間がいっぱいで、若い男性から渋い男性までボーイ…

本屋に本がない

このところ、書肆侃侃房は福岡の出版社だと必要以上に意識させられることが多い。文学ムック「たべるのがおそい」の今村夏子さんの作品「あひる」が芥川賞にノミネートされたから、ということもあるが、「たべるのがおそい」はどこの書店で買えるのか、とい…